【サッカー】効果的な持久力強化に必要な走り込みの知識『エネルギー供給機構』について。
みなさん、いつもブログを閲覧して頂きありがとうございます。
GPSがスポーツ界に登場してから10年以上が経過。
GPSの存在によって細部に渡ったランニングパフォーマンスの分析が可能になり、スプリントトレーニング・持久力トレーニング・方向転換動作トレーニングに変化がもたらせれました。
GPSの開発は、サッカーの発展に寄与する革新的なスポーツ科学のリノベーションと言えるでしょう。
現代サッカーにおいてランニングパフォーマンスの重要性が増したコトが理解できているにも関わらず、どの様にランニングメニューを組めばよいか分からず、指導者が選手時代に取り入れたメニューを実施し続けているチームも多くあるのではないでしょうか?
特にプロチームでなければ、専門知識を持ったフィジカルコーチ・アスレティックトレーナーを帯同させられるチームも限られているのが現状。
というコトで、今回は走り込みのトレーニング効果を最大減に引き出したいけど、どの様にメニューを組み立てれば良いか分からないといった方に向けての記事になります。
内容は、『基礎的な運動生理学とサッカーのパフォーマンス』。
『筋肉が動く仕組み』と『3つの異なるエネルギー供給機構の仕組み』の理解を深めるコトで、『スポーツ科学に則ったサッカーの持久的パフォーマンスの分析』ができる様になります。
わかりやすく、以下の流れでサッカー指導者に向けてまとめたいと思います。
①:エネルギー供給の仕組み
②:筋肉が動く仕組み
③:ハイパワーパフォーマンスのエネルギー供給の仕組み
④:ミドルパワーパフォーマンスのエネルギー供給の仕組み
⑤:ローパワーパフォーマンスのエネルギー供給の仕組み
⑥:まとめ
①:エネルギー供給の仕組み
サッカーのパフォーマンスは運動強度によって、ハイパワーパフォーマンス・ミドルパワーパフォーマンス・ローパワーパフォーマンスの3つに分類できます。
ウォーキングやジョギングでポジション修正しながら回復に時間を当てたり、ライン間に入り首振りで情報収集をするなどの低い強度のパフォーマンスは”ローパワー”に分類。
FWのデフェンスラインの裏への連続的な飛び出しだったり、カウンター時のペナルティエリア間のスプリント、SBがセンターリングの為のアップダウン、などのパフォーマンスを繰り返す運動はミドルパワーに分類されます。
ハイパワーパフォーマンスは、ペナルティエリア付近で一瞬で相手を剥がしシュートまで持っていくプレー、シュートブロックで身体を投げ出す局面やFWのアタッキングサードでの奪いに行くプレッシング。ロングボールに対して着地を伴うジャンプヘッドで弾き返す空中戦など試合を決定づける局面で使われるコトが多いのが特徴です。
この3つの強度のパフォーマンスは、それぞれ異なるエネルギー供給機構が適応されています。この点、誤解が無い様に先に言うと3つのエネルギー供給機構が独立して各パフォーマンスに関与しているのではなく、あくまでもエネルギー供給の割合が高いというコト。
つまり、シュートを打つハイパワーパフォーマンスでは、ハイパワーのエネルギー供給機構がメインで関与しているが、ミドルパワーのエネルギー供給機構も少なからず関与しているイメージ。
②:筋肉が動く仕組み
スプリント・ジャンプ&着地・シュート。
人間が運動をする際は体内のATPという物質が分解される過程でエネルギーを得ます。
ATPの分解から得たエネルギーをもとに関節をまたいで走行する筋肉が収縮し関節が動き、他の関節と連動するコトで動きが生じます。
しかし、このパフォーマンスの源となるATPは、体内にわずかしか貯蔵されていないのが問題。
どの位の量かというと、ハイパワーの運動強度だと数秒で枯渇してしまう位の量…
この事実から、人間の身体はエネルギー源のATPが枯渇しない様にATPを生成する3つの経路をハイパワーパフォーマンス・ミドルパワーパフォーマンス・ローパワーパフォーマンスに合わせて持っているのです。
3つの経路は、以下の通り。
1️⃣:ハイパワーパフォーマンス⏩ATP-CP系
2️⃣:ミドルパワーパフォーマンス⏩解糖系
3️⃣:ローパワーパフォーマンス⏩酸化系
まず初めに押さえておく特徴として”ATP-CP系”と”解糖系”は、酸素を利用しないでATPを産生するので無酸素運動への関与が大きく、酸化系は酸素を利用してATPを産生するので有酸素運動への貢献度が高いと言われています。
それでは、それぞれのエネルギー供給機構の特徴を細かく見ていきましょう。
☝️POINT:筋肉は、ATPを分解するコトによって収縮する。
③:ミドルパワーパフォーマンスのエネルギー供給の仕組み
ATP-CP系では、クレアチンリン酸(CP)という物質をエネルギー源としてATPを産生します。
ATPの産生スピードは短く、爆発的なパフォーマンスを発揮に関与する試合を決定づけるハイパワーパフォーマンス時に活躍するエネルギー供給機構と言われています。
しかし、体内に存在するATP -CP系では産生できるATPの量はごく僅かで長時間のパフォーマンスは不可能でパフォーマンスの継続時間は8秒と言われています。
つまりハイパワーパフォーマンスを鍛えたい際は、8秒程度の運動を最大努力で行い、体内のエネルギー源のATPが十分に回復するまでしっかりとした回復するコトが必要となります。
☝️POINT:ハイパワーパフォーマンス強化を目的としたトレーニングは、8秒以内で十分な回復を取るコト。
④:ミドルパワーパフォーマンスのエネルギー供給の仕組み
ATP-CP系と同様に無酸素運動に関与するエネルギー供給機構が『解糖系』。
ミドルパワーパフォーマンスの為のエネルギー供給で、糖をエネルギー源としてATPを産生しています。
ATP産生のスピードは比較的早く、ATP-CP系程ではないけど瞬間的なパフォーマンス発揮の際に使われます。
サッカーでは非常に多くのパフォーマンスに貢献しており、30秒〜60秒のパフォーマンスで貢献すると言われています。
解糖系を利用した高強度運動が一定時間以上継続されると疲労物質と認識されている”乳酸”が発生します。
しかし、この乳酸はローパワーパフォーマンスに関与する『酸化系』でエネルギー源として再利用されるコトから、無酸素性パフォーマンスだけでなく有酸素性パフォーマンスにも関与していると言われます。
この事実から、ハイパワーパフォーマンスを繰り返さなければならないサッカーにおいて乳酸を再利用する能力を鍛えるコトは、持久的パフォーマンスの強化に直結する重要なテーマになると理解できます。
ミドルパワーパフォーマンスを鍛えたいときは、30秒〜60秒の最大努力下の運動で乳酸を一気に産生させ、セット間のレストで素早い回復に努め、次のセットに移行するというトレーニング方法が必要となります。
☝️POINT:ミドルパワートレーニングは、30秒〜60秒以内の運動で回復し切らないうちに次のセットに取り組む。
④:ローパワーパフォーマンスのエネルギー供給の仕組み
ローパワーパフォーマンスは”酸素”と”脂肪”をエネルギー源としています。
高強度運動が繰り返されるパフォーマンスでは、場合によっては解糖系で発生した”乳酸”をエネルギー源として再利用します。
働き始めるまでに時間がかかり、ATP -CP系や解糖系と比較するとゆっくりとATPを産生して長時間の運動が継続可能という特徴があります。
ローパワートレーニングは、脂肪をエネルギー源としているので身体のキレを出す為に必要なトレーニング方法になります。
ローパワーのトレーニング方法としては、スピードが早くなりすぎて糖質が使われない様にコントロールするスロージョギングがオススメ。
時間が長くなりすぎると筋肉を削ってできたタンパク質をエネルギー源とするので、特にトレーニング後は長くても20分程度に納めるのが理想でしょう。
⏩⏩【参考記事】【サッカー】ローパワートレーニング。練習後20分間の有酸素運動(スロージョギング)の効果とオススメな理由4点。
☝️POINT②トレーニング後の脂肪燃焼を目的とした有酸素運動は長くても20分に納める。
⑤:まとめ
以上今回は、”効果的な持久力強化に必要な走り込みの知識『エネルギー供給機構』について”でした。
サッカーの場合、ATP-CP系・解糖系を使ってエネルギーを産生しインテンシティの高いパフォーマンス繰り返し、アクション間はジョギングや・ウォーキングなどの低強度運動をしながら回復を促す、間欠的な持久力が求められます。
是非、今回の記事をサッカーの持久的パフォーマンスの分析に活用して頂き、効率的な持久力強化の為のメニュー作成に役立てて頂ければ幸いです。
それでは。